コンピテントセルとは
コンピテントセル(Competent Cells)とは、DNAを効率的に取り込むことができる状態の細胞です。外来DNAを取り込むことによって起きる細胞の遺伝的変化を「形質転換(transformation)」と呼びます。ここではプラスミドのクローニングによく利用される大腸菌コンピテントセルについて説明します。
ケミカルコンピテントセル
大腸菌コンピテントセルのうち、もっともよく実験で用いられているのはケミカルコンピテントセル(Chemically Competent Cells)です。これはカルシウム等の二価の陽イオン存在下で調製した大腸菌を凍結することにより形質転換効率を高めたコンピテントセルです。ケミカルコンピテントセルの調製には様々な方法があります。
-80℃程度で凍結保存されたコンピテントセルはいつでも形質転換に使用することができる便利なツールです。一般的に、大腸菌コンピテントセルは以下のような手順で使用します。
- 氷上で融解
- プラスミド添加
- 氷上で30分間静置
- ヒートショック (42℃)
- SOC等での1時間程度の回復培養
- 薬剤選択のための抗生物質(アンピシリンなど)を含む培地(LB寒天培地など)で培養
※(2)-(5)の操作時間:1時間30分程度
エレクトロポレーション
エレクトロポレーション(電気穿孔法)によって大腸菌にDNAを導入する方法もあります。一般的に、エレクトロポレーションはケミカルコンピテントセルよりも形質転換効率が高い傾向にあります。
大腸菌株
大腸菌には様々な性質を持った株が存在し、コンピテントセルとしては、クローニング用としてDH5αやJM109などの株が、蛋白質発現用としてBL21(DE3)などの株がよく使用されます。
形質転換効率
形質転換効率とは、細胞に添加されたDNA 1μgあたりの形質転換体(外来DNA を取り込んだ細胞)の数です。形質転換効率の測定は大腸菌コンピテントセルでは、抗生物質(アンピシリン、テトラサイクリンやクロラムフェニコールなど)への耐性をつくる遺伝子を有するプラスミドを使用して行います。希釈したプラスミドによってコンピテントセルを形質転換、抗生物質を含む培地(LB寒天培地など)で培養し、得られたコロニーの数を計数して、形質転換効率を算出します。形質転換効率はプラスミドの種類によって異なる値が得られます。一般的に、大きいプラスミドほど形質転換効率は低くなることが知られています。
形質転換効率の測定例 例えば以下のような形質転換を行い、100個のコロニーが得られた場合
- 100 μLのコンピテントセルを氷上で融解
- 1 ng (0.001 μg)のpUC19プラスミドを添加
- ヒートショック (42℃)
- 900 μLのSOCを加えて1時間の回復培養 (全量は1,000 μLとなる)
- 100 μg/mLアンピシリンを含むLB寒天培地に100 μL(全量の1/10)を植菌
- 37℃、1晩培養
形質転換効率
= [コロニー100個] x [1000 μl(菌液全量)/100 μl(植菌量)] / [0.00 1μg pUC19]
= 1 x 106 cfu (colony forming unit) / μg pUC19
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