ホーム  >  実験TIPS  >  Vol.7

実験TIPS

RNA変性電気泳動の手順

RNAの電気泳動方法

通常の核酸ゲル電気泳動において、2本鎖DNAは相補的な水素結合を形成することで安定な構造をとり、鎖長に応じた泳動・分離が可能です。一方、RNAは1本鎖であるため、分子内で形成する水素結合によって高次構造を形成します。従って、電気泳動を実施しても、鎖長に応じた泳動・分離はできません。

 

 

 

 

 

 

 

 

RNAの電気泳動を行う場合は、RNAの変性処理と変性ゲルによる泳動中の変性の維持によって高次構造を解消することで鎖長に応じた泳動・分離を行うことが可能です。

RNAの電気泳動では500 b (base)を目安に、500 b以上ではアガロースゲル、500 bより小さい場合はアクリルアミドゲルを選択します。

また、当社の「Easy Electrophoresis Loading Buffer」(代理店webサイトリンク)を用いることで非変性アガロースでのRNA電気泳動が可能です。

 

 

 

 

 

 

 

 

ホルムアルデヒド変性アガロースゲル電気泳動
(Denaturing Agarose Gel Electrophoresis with Formaldehyde)

準備する試薬

<変性アガロースゲル>
  • Agarose

  • 10×MESA Buffer: 0.2 M MOPS, 20 mM Sodium acetate, 10 mM EDTA

  • 37% Formaldehyde Solution

POINT

アガロースは製品ごとにDNAの分離範囲が異なるため、適切なゲル濃度や分離範囲については各供給元による情報を参照すること。

<サンプル調製>
  • Formamide

  • 10×MESA Buffer: 0.2 M MOPS, 20 mM Sodium acetate, 10 mM EDTA

  • 37% Formaldehyde Solution

  • 200 µg/mL Ethidium Bromide

  • 10× Formaldehyde gel-loading buffer: 50% (v/v) Glycerol, 10 mM EDTA (pH8.0), 0.025% (w/v) Bromophenol Blue

POINT

臭化エチジウムは生物に対して変異原性が疑われているため、SDS(Safety Data Sheet)をよく読み、取り扱いは慎重に行うこと。

<泳動バッファー>
  • 1×MESA Buffer: 20 mM MOPS, 2 mM Sodium acetate, 1 mM EDTA

必要な器具

  • 三角フラスコ

  • 電子レンジ (実験専用)、またはオートクレーブ

  • ゲル作成トレイ・コーム

  • 電気泳動層・パワーサプライ

  • 検出器

試薬の調製

オススメ!

DNase/RNase free waterはコチラ

手順

ホルムアルデヒド変性アガロースゲルの作製 (1% アガロースゲルの例)
  1. 液量の5倍容量の三角フラスコにRNase free waterとアガロースを入れる

  2. 蓋をせずに電子レンジで加熱し、アガロースを溶かす (オートクレーブでも可)

  3. ゲル化しないある程度の温度に冷えたらMESAバッファーとホルムアルデヒド溶液を加え、よく混ぜる。

  4. ゲル作成トレイに溶液を流し込みコームを挿し込む

  5. ゲルが冷えて固まるまで静置する

  6. コームを外す

POINT

ホルムアルデヒドは毒性が高く、単体では室温で気体の物質である。すべての操作はヒュームフード内で行う。
電子レンジ加熱時は突沸に注意し、こまめに三角フラスコを取り出し、撹拌する。
アガロースの気泡は≒100%エタノールスプレーの吹き付けると簡単に除去できる。
アガロースを厚く作りすぎるとバックグラウンドが高くなるので注意する。
アガロースが溶けにくい場合は、冷却したRNase free waterを撹拌しながらアガロースを入れ、水和するまで撹拌した後、手順2を行う。
終濃度0.67 Mホルムアルデヒドとなる。一般的な2.2 Mよりも低濃度だが、変性作用は十分得られる。使用量も抑えられるためオススメ。

RNA試料の調製
  1. 上記の混合比率で、(1)~(5)を混合する

  2. 75℃で3分間加熱する

  3. 氷上で冷却する

  4. (6)を添加し、混合する

電気泳動・検出
  1. 泳動槽に変性アガロースゲルをいれ、1×MESAバッファーをゲル上5 mm程度まで入れる

  2. ウェルにマーカーとサンプルをロードし、50-100 Vで泳動する

  3. UVトランスイルミネーターによりバンドを確認する(染色不要)

POINT

すべての操作はヒュームフード内で行う。ホルムアルデヒド・臭化エチジウムは毒性が高く、電極から発生する気泡により、バッファー成分が容易に空気中に放出される。
RNAの必要量は実験により異なる。Northern Blottingには15 µg以上必要。
電圧の設定は電極間の距離に対して4-10 V/cm に設定する。
臭化エチジウムは300 nmが極大励起波長。280-350 nm、500-550 nmで励起可能。
UVを使用する場合は目の保護具をつけること。

オススメ!

当社のRNAマーカーはコチラ

 

 

 

 

変性Urea PAGE (Denaturing Urea Polyacrylamide Gel Electrophoresis)

準備する試薬

<尿素変性アクリルアミドゲル>
  • 40% (w/v) Arylamide/Bisacrylamide Solution (19:1)

  • 10×TBE Buffer: 880 mM Tris(hydroxymethyl)aminomethane, 880 mM Boric acid, 20 mM EDTA・2Na

  • Urea

  • TEMED

  • 10% (w/v) Ammonium Peroxodisulfate (Persulfate)

<サンプル調製>
  • Loading buffer: 80% Formamide, 10 mM EDTA, 0.025% (w/v) Bromophenol Blue

<泳動バッファー>
  • 1×TBE Buffer: 88 mM Tris(hydroxymethyl)aminomethane, 88 mM Boric acid, 2 mM EDTA・2Na

<染色剤>
  • 1.0 mg/mL Ethidium bromide

POINT

臭化エチジウムは生物に対して変異原性が疑われているため、SDS(Safety Data Sheet)をよく読み、取り扱いは慎重に行うこと。

必要な器具

  • ビーカー

  • マグネティックスターラー・撹拌子

  • ゲル作成プレート・コーム

  • 電気泳動層・パワーサプライ

  • 検出器

試薬の調製

オススメ!

DNase/RNase free waterはコチラ

手順

尿素変性アクリルアミドゲルの作製 (10% アクリルアミドゲル(ミニゲル2枚分)の例)
  1. 上記の混合比率で、(1)~(4)をビーカーに入れ、撹拌子を用いて完全に溶解する

  2. (5)~(6)を加え、ゲル作成プレートに流し込み、コームをセットする。

  3. ゲルが固まるまで静置する(ゲル溶液のあまりでゲル化具合を確認できる(酸素との接触に注意する))

RNA試料の調製
  1. RNAサンプルに対して2倍以上の液量のLaoding Bufferを混合する

  2. 80℃で5分間加熱する

  3. 氷上で冷却する

電気泳動
  1. 作製した変性アクリルアミドゲルを泳動槽にセットし、1×TBEバッファーを満たす

  2. ウェルにマーカーとサンプルをロードし、200V定電圧で泳動 (ミニゲルおよそ45~60分程度)

  3. ゲルを取り出し、RNase free water中で10分間振盪

POINT

ロードする直前にウェルを洗浄し,ゲルの破片などの泳動の妨げとなるものを取り除く。
※特にゲル中のUreaがウエルの底にたまりやすいため注意する。
冷却したバッファーや、冷蔵装置等の利用で、良好な泳動結果が得られる。特にラージゲルでは発熱量が多いため十分注意する。
使用しないウェルに1×サンプルバッファーをロードするときれいに泳動できる。
ロードする試料の液量を揃えるときれいに泳動できる。
ローディングチップなどを用いてウェルの底にロードするときれいに泳動できる。

オススメ!

当社のRNAマーカーはコチラ

染色・検出
  1. 1.0 mg/mL 臭化エチジウム溶液をRNase free waterで2,000倍に希釈した溶液でゲルを15 min振盪する

  2. ゲルをRNase free waterで軽くリンスする

  3. UVトランスイルミネーターによりバンドを確認する

POINT

ゲル内RNAは分散しやすいため振盪時間に注意し、適宜調節する。
臭化エチジウムは300 nmが極大励起波長。280-350 nm、500-550 nmで励起可能。
UVを使用する場合は目の保護具をつけること。