洗浄不要のイムノアッセイ構築キット
ONEPot Immunoassay Kit <OpenGUS Method>
任意の抗体(Mouse IgG1)を用いてタンパク質等の抗原を検出する測定系を構築するためのキットです。変異体β-glucuronidase (GUS)を用いた新技術OpenGUS Immunoassayの原理で測定を行います。 | ![]() |
※本製品は上田宏博士、北口哲也博士および朱博博士他(国立大学法人東京工業大学科学技術創成研究院(当時))の研究成果をもとに、BDLが開発、製品化しました。
※本製品の元となった技術が論文になりました(東京科学大学との共同プレスリリースはこちら)。
製品の特長
ELISAより簡単 (測定操作も系の構築もELISAより簡単)
Western Blottingより短時間で定量性が高い
抗体(Mouse IgG1) 2種類で抗原(タンパク質)をサンドイッチし検出
1種類の抗体のみで検出できる場合もあり(多量体を安定して形成するタンパク質の場合)
ウェルの洗浄は不要
抗体のプレートへの固相化は不要
抗体と検出用酵素は混合するだけでアフィニティ結合
使用抗体量は96 wellあたり約7 μg×2種類と少量
廃液が少ない
蛍光測定用キット(#DS850)と吸光測定用キット(#DS860)
ONEPot Immunoassay <OpenGUS> |
サンドイッチELISA | Western Blotting | |
---|---|---|---|
洗浄 | 不要 | 必要(2~3回) | 必要(1~3回+Blocking) |
反応時間 | 2時間10分 | 3時間程度 (抗体固相化を行う場合は+1日) |
1日+α |
感度 | ○ | ◎ | ○ |
定量性 | ◎ | ◎ | △ |
使用抗体量 | 約7 μg×2種類 (96 well) 抗原が多量体を安定に形成していると 1種類の抗体で検出できる場合も多い |
捕捉抗体:約100 μg 検出抗体:~約 μg (96 well) |
約1~数10 μg (メンブレン) |
抗体の固相化 | 不要 | 必要 | 不要 (電気泳動・転写は必要) |
検出抗体 | 未標識 | 標識が必要 | 標識が必要 |
抗原の種類 | 任意 | 任意 | 任意 |
検出 | 蛍光・吸光 | 蛍光・吸光 | 発光・蛍光・吸光 |
操作 | 簡単 | やや複雑 | 複雑 |
自動化との 相性 |
◎ | ○ | △ |
廃液量 | 30 ml 程度 (96 well分) |
200 ml 程度 (96 well分) |
1,000 ml 程度 (電気泳動を含む) |
原理
大腸菌の野生型β-glucuronidase (GUS)は4量体を形成しています。一方、本製品に用いられる変異体GUSは単量体間の親和性が低下しており、2量体は形成するものの4量体をほとんど形成しません。そのため、活性が大きく低下しています。
本製品は抗体結合ドメインを融合させた変異体GUSです。本製品に抗原および抗体を加えることにより、変異体GUSの2量体同士が連結し、4量体が形成されます。こうして形成されたGUS 4量体は活性を有するため、抗原濃度依存的なシグナルを得ることができます。

注意事項
・対象とする抗原がタンパク質の場合、3 μg/ml以上が含まれるサンプルを推奨します。(100倍希釈して30 ng/mlとして測定することを想定)
・サンプル溶液の組成にシグナル強度が大きく影響される場合があります。
・検出感度は抗原および抗体によって異なります。
・ヒト血清/血漿/血液等のイムノグロブリンが多く含まれるサンプルはバックグラウンドが高くなるため、使用できません。
操作方法概略
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抗原、抗体とキット付属の酵素を混合
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60分間静置
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基質添加
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60分間静置
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測定(蛍光または吸光)
キット内容
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Recombinant GUS mixture
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Reaction buffer
-
Fluorescent substrate(#DS850のみ)
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Colorimetric substrate(#DS860のみ)
別途ご用意いただく試薬/器具
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抗原をサンドイッチ可能なmouse IgG1のペア
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精製抗原(検量線用)
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96 well plate
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Microplate reader
蛍光 (#DS850):励起光 340 nm / 蛍光 450 nm
吸光 (#DS860):主波長 405nm / 副波長 660 nm -
マルチチャンネルピペッター
使用例
使用例1 唾液/涙中のLactoferrin濃度の測定
唾液および涙中のLactoferrin濃度を、本品を使用して測定し、市販のLactoferrin ELISA kitを用いて得られた結果と比較した。


抗体: Anti-Lactoferrin, Human, Mouse-Mono(1A1) (HyTest, #4L2-1A1)
※1種類の抗体のみで検出を行った。Lactoferrinは多量体を形成しているため、1種類の抗体のみで検出が行えたと考えている。
※検量線の縦軸(Absorbance)は[Signal – Background]の値を使用
使用例2 Cryj1(スギ花粉抗原)の検量線(蛍光および吸光測定)


抗体: Anti-Cry j1, Mouse-Mono(013) (BDL # HBL-Ab-1-013) および Anti-Cry j1, Mouse-Mono(053) (BDL #HBL-Ab-1-053)
*Cryj1濃縮サンプルからはcryj1の測定が可能だが、環境サンプルからCryj1を検出する感度は得られなかった。
* 検量線の縦軸(FluorescenceおよびAbsorbance)は[Signal – Background]の値を使用
使用例3 AAV2 (empty capsids)の検量線(蛍光および吸光測定)


抗体: 抗原: AAV2 empty capsids (PROGEN #66V020)
抗体: Anti-AAV2 (intact particle) mouse recombinant, (A20R) (PROGEN #610298)
※1種類の抗体のみで検出を行った。Capsid表面に整列する抗原を検出しているため、1種類の抗体のみで検出が行えたと考えている。
このほかにもhuman C-Reactive Protein (CRP)、Calf-Intestinal Alkaline Phosphatase (CIAP)についての使用例がございます。製品マニュアルをご覧ください。
FAQ
Q. 蛍光/吸光両方測定可能なプレートリーダーを持っている。蛍光(#DS850)と吸光(#DS860)のどちらのキットを選べばいいか。
A. 蛍光測定のキット(#DS850)の方が、若干感度が高い傾向にあるため、こちらをお勧めします。
Q. インキュベーション時間を短縮できないか。
A. Signal/Backgroundが充分に高ければ、基質を加える前の4℃60分間のインキュベーションを省くことができます。ただし、この場合もサンプル添加までの作業は氷上で行ってください。
Q. 蛍光基質の反応に使用する25℃のインキュベーターを持っていない。
A. 蓋およびアルミホイルなどをかぶせて遮光し、室温で反応を行ってください。
Q. アジ化ナトリウムが抗体に含まれているが大丈夫か。
A. 終濃度0.1%のアジ化ナトリウムなら大きな影響はないことを確認しています。
Q. 蛍光測定は、「励起光340nm – 蛍光450nm」以外ではできないのか。
A. 励起光360、蛍光480でも測定できることを確認しています。ただし、感度はやや低下します。
Q. 吸光測定は、405nmでなければいけないか。
A. 405nm周辺であれば測定可能です。ただし、吸光度はやや低下します。バックグラウンドに使用する波長も660nm周辺であれば測定可能です。
Q. Mouse IgG1以外の抗体は使用できないか。
A. 本品はMouse IgG1に最適化されています。Mouse IgG2a, IgG2b, IgG2c, IgG3ではバックグラウンドが高くなる抗体クローンが存在することを確認しています。またRabbit polyclonal抗体でもバックグラウンドが高くなることを確認しています。
Q. 抗タグ抗体は使用できるか。
A. Anti-6xHis抗体は使用できません。その他の抗タグ抗体については確認を行っておりません。
Q. どの程度の濃度のタンパク質を測定できるのか。
A. 抗原、抗体によって測定できる範囲は異なります。下記『検量線を作成できた抗原濃度範囲』をご参照ください。
検量線を作成できた抗原濃度範囲 (基質反応時の抗原濃度)
Lactoferrin: 3 – 824 ng/ml (0.04 – 10 nM)
CRP: 0.06 – 57 ng/ml (0.0005 – 0.5 nM)
Cryj1: 3.4 – 117 ng/ml (0.08 – 3 nM)
CIAP: 66 – 4200 ng/ml (0.47 – 30 nM)
AAV2 (empty capsids): 9.4×108 – 6.0×1010 copy/ml
関連文献
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J. Su, et al., Analyst, 143, 2096-2101(2018). [PMID:29634056]
-
J. Su, et al., J. Biosci. Bioeng., 128, 677-682(2019). [PMID:31235413]
-
J. Su, et al., Sci. Rep., 9, 18189(2019). [PMID:31796769]
-
B. Zhu, et al., Biochemistry, 62, 309-317(2023). [PMID:35849118]
-
B. Zhu, et al., Biosens. Bioelectron. 267, 116796(2025). [PMID:39316870]
ライセンスに関して
本製品は、研究目的用にのみ販売しております。
本製品は東京工業大学よりライセンシングを受けて製造販売を行っております。日本国内での商業用ライセンスに関する情報については、株式会社バイオダイナミクス研究所にお問い合わせください。
本製品またはその改変物を、株式会社バイオダイナミクス研究所の書面による事前の承諾なしに、第三者への転売、商用製品の製造、サービスの提供に使用することはできません。


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