ISによるプラスミドの変異を抑制するコンピテントセル
DynaCompetent® Cells IS-mutation Safe (旧商品名:LowInSeq)
ゲノム中のDNA型転移因子(Insertion Sequence Element, IS)の活性を低下させた大腸菌コンピテントセルです。ISのプラスミドへの挿入を抑制し、プラスミド調製を確実に行うことができます。大腸菌にとって負荷がかかる、大きいプラスミド等のクローニングに有用です。
製品の特長
- DNA型転移因子(Insertion Sequence Element, IS)によるプラスミドの変異を抑制します。
- 遺伝子クローニングやプラスミド調製、特に大腸菌に負荷のかかる大きなプラスミド等のクローニングに有用です。
- 形質転換効率:>1×108 CFU/μg(pUC19)
- 10×1 ml SOC medium添付
- カルタヘナ法規制に該当しません。
Banno, S., et al., Nature Microbiol., 3, 423-429b(2018).[PMID: 29403014]
Fan, C., et al., ACS Synth. Biol., 20;8(9):2141-2151(2019)[PMID: 31375026]
プラスミドの大腸菌への導入・増幅時に実はこんな問題が起きています
DynaCompetent® Cells IS-mutation Safe
本製品はDH5αを元株として、大腸菌ゲノム中のISのうち、IS2,IS5,IS10,ISEc63(類似配列) (計25コピー)のトランスポザーゼ翻訳領域中に終止コドンを導入し、ISの活性を低下させた*1大腸菌コンピテントセルです。
*1 ISの活性は低下しているものの,ISが転移しないことを保証するものではありません。
使用例
プラスミドへのIS挿入が減少
プラスミドに対するIS挿入頻度の低下の確認
本製品および大腸菌DH5α株をアンピシリン耐性プラスミド(30 kb, pUC ori)で形質転換後、24時間液体培養し、さらに6回まで継代培養を行った。上記それぞれの培養時にプラスミドを精製し、HiSeqでの次世代シークエンシングを行い、プラスミドのうちIS*2の挿入されたものの概算比率を推定した*3, 4。
DH5α株に対して本製品ではプラスミドへのISの挿入が抑制された。
*2 IS:IS1, IS2, IS3, IS4, IS5, IS10, IS30, ISEc5, IS609, ISEc63の合計数。
*3 DH5α株は+6回継代培養時点で計算上100%を越えており、1つのプラスミドに2つ以上のISが挿入されたことが示唆される。
*4 別途、DH5α株に同プラスミドを挿入し、6回の継代培養後9クローンを単離し、サンガーシークエンシングを行ったところ、すべてのクローンにISEc63類似配列が挿入されており、プラスミドへのIS挿入率の高さが裏付けられた。
上記の解析で使用したISの配列はこちら。
精製したプラスミドのシークエンシングデータ(特にNGS)とアラインメントすることにより、プラスミドへのISの挿入が確認できます。
上記のプラスミドをBamHⅠで消化し、アガロースゲル電気泳動を行った。 本プラスミドのBamHⅠサイトは2つであり、本来2本のバンドが生じるが、継代回数を重ねることによりDH5α株ではバンドパターンに変化が確認された。プラスミドへのISの挿入が示唆される。 一方、本製品で継代したプラスミドでは、バンドパターンの変化が抑制されていた。
プラスミド上の機能領域へのISによる損傷を防いだ例
lac promoter制御下にGFPを有するプラスミド(上記「プラスミドへのIS挿入が減少」のグラフや泳動図とは異なるプラスミド)によって、本製品および大腸菌DH5α株を形質転換した。得られたコロニーを用いて18時間の液体培養を行い、さらに6回まで継代培養を行った。継代培養後、培養液をLBプレートに塗布し、一晩培養を行った。得られたコロニーについて、GFPの蛍光を観察した。
その結果、DH5αでは出現したコロニーのうち48.6%でGFPの蛍光が消失または減弱したが、本製品ではGFPの蛍光が消失または減弱したコロニーは確認されなかった。DH5α株においてGFPの蛍光が消失または減弱したコロニーからプラスミドを抽出し、シークエンシングを行ったところ、いずれのクローンでもlac promoter中、またはlac promoterとGFP遺伝子の間にDNA型転移因子であるIS2またはIS10Lが挿入されていた。
一方、本製品および蛍光を有するDH5αのコロニー由来のプラスミドでは、lac promoterからGFPにかけての領域は無傷で保存されていた。
継代培養によって、DH5αではISの挿入でプラスミドが損傷したクローンが得られたが、本製品ではISによるプラスミドの損傷が抑制されていることが確認された。
*5 本製品では、無傷のプラスミドでもLBプレート上で観察されるGFPの蛍光輝度がDH5αよりも低かった(目視で観察可能な蛍光は有していた)。DH5αに比して本製品ではlac promoter制御下でのGFPの発現量が低値である可能性がある。ただし、プラスミドのクローニングおよび精製は問題なく行えた。
ターゲットは、当社実験でプラスミドへの挿入頻度が高かったIS2, IS5, IS10, ISEc63(類似配列)の4種類、大腸菌ゲノム中に存在する計25コピーとしました。
作製した株に対して、IS挿入の抑制によるプラスミドの変異が少なくなることを確認し、発売となりました。
IS-mutation Safeは、ゲノム編集生物を製品化した国内初の例(2020年10月発売)となります。日経バイオテクにも2020年12月に「ゲノム編集技術で育種された生物が日本で初の商品化」として紹介されました。カルタヘナ法規制非該当品とできたのも、意義あることであったと考えています。
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