磁気ビーズを用いた分離について
磁気ビーズを用いた分離技術は、DNA抽出、タンパク質精製、ウィルス精製、エクソソーム精製から細胞分離まで幅広く活用されています。その仕組みと、遠心分離法やカラム法との比較を解説します。
磁気ビーズの構造
磁気ビーズとは、酸化鉄(磁性体)のコアをポリマーなどでコーティングした、ナノメートルからマイクロメートルオーダーの微小な粒子です。表面には、ターゲットに親和性結合をする物質(リガンド)が固定化されています。
分離の4つのステップ
結合(Binding):サンプルに磁気ビーズを添加。ビーズ表面のリガンドがターゲット(DNAや特定の細胞表面抗原)に結合します。
集磁(Collection):チューブの外側から磁石を近づけます。ターゲットに結合したビーズが磁石に引き寄せられ、チューブの壁に固定されます。
洗浄(Washing):磁石を当てたまま上清を吸引し、洗浄液を加えます。磁石を離し、ビーズを懸濁した後、再度磁石を当て、上清を吸引します。これを指定数繰り返して洗浄を行います。
溶出・回収(Elution):磁石を離し、溶出液を加えてターゲットをビーズから乖離させます。再度磁石を当て、ターゲットの因子が溶出した上清を回収します。
磁気ビーズによる分離のメリット
1. DNA・RNA抽出におけるメリット
物理的ダメージが少ない:遠心分離(スピンカラム法など)のような強い重力やせん断力がかからないため、長鎖DNAが断片化しにくいのが特徴です。
自動化への適用:「液を吸引し、吐出する」という単純な動作で操作が完結するため、自動精製装置との相性が良く、多検体処理に適しています。
2. 細胞分離におけるメリット
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「ポジティブ分離」と「ネガティブ分離」が可能:
ポジティブ分離:必要な細胞を直接ビーズで集める方法。
ネガティブ分離:不要な細胞をビーズで除き、上清に残ったターゲット細胞を得る方法。 -
細胞へのストレスが小さい:遠心分離や長時間のフローサイトメトリー(FACS)に比べ、短時間かつ穏やかな環境で分離できるため、細胞へのストレスを小さくできます。
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簡便なセットアップ:FACS等の装置がなくても、磁石スタンドのみで細胞分離が可能です。
3. 実験効率の向上
時間の短縮:遠心が不要でトータルの作業時間が削減されます。
ヒューマンエラーの低減:自動化が容易であるため、テクニックによるデータのバラツキを抑え、再現性が向上します。
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